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ゲーム好きマイペース人生の軌跡:年輪日記

就職して子供も生まれて…と、気がつけば10年以上。マイペースなゲーム好きの日常を綴ったブログです。

【修道士カドフェル】 感想

小説、本
働きだして趣味に費やせる時間は大幅に減ったわけですが、費やす時間の増加しているモノが二つあります。ひとつはビリヤード、もうひとつは下にも書いてありますが、読書です。片道1時間電車に乗らねばならないこともあって、一週間に一冊は読み終えてしまっています。意外にも、学生時代よりも速いペースなんですよね、これが。

さて、現在読み進めている本の中に、修道士カドフェル・シリーズがあります。
12世紀の英国シュールズベリが主な舞台で、その修道院に所属する修道士カドフェルが様々な事件を解決するという物語です。僕がこのシリーズを知ったのは、大学時代、西洋史の講師の方が紹介されていたからでした。ミステリ要素だけでなく歴史や当時の風俗習慣がよく分かる描写がされており、先生が勧めて下さったのもうなずけます。現時点で、六巻まで読み終えたところです。

正直、一巻目の『聖女の遺骨求む』を読み終えたときの感想は、「つまらなくはないけれど、それほど面白くもないな」というものでした。ところが二巻三巻と読み進めていくうちに、12世紀のイングランドとそれを彩る登場人物にすっかり引き込まれてしまいました。
とくにツボにはまったのが、二巻『死体が多すぎる』で登場するヒュー・ベリンガー。中肉中背のしなやかな容貌と冷静で現実的でありながらユーモアを解する頭を持つこの人物、脳内映像では若き日のギルデンスターン(C:VAGRANT STORY)といった感じです。(ギルデンスターンのように堕ちたりはしないでしょうから、外見イメージ的に、という意味で。)二巻以降もたびたび登場してカドフェルを手助けするこのベリンガーの他にも、渋い脇役が大勢登場します。第五巻『死への婚礼』に登場するラザラスもその一人。癩(らい)病患者として施療院にやってきた寡黙な老人なのですが、その淡々とした生き様が強く印象に残ります。

そしてもちろん、主人公カドフェルも魅力的な人物です。壮年を過ぎつつあり、余生を修道院で過ごそうと決めたカドフェルですが、若い頃は十字軍に参戦し、世界各地を巡っていたという経歴を持っています。それによって得た知識と哲学、そして落ち着いて物事と向き合う姿勢と何よりもユーモアが、カドフェルの存在感となっています。こんな人物が自分の近くにいれば、と思わずにいられません。

最後に、そのカドフェル・シリーズの中でも印象深い一節をご紹介。

カドフェルは薬学の知識もあり、修道院の治療役もやっています。彼には、マークという見習い修道士の少年が助手として付いています。あるときマークは一人の男の手当てをするのですが、その男はある事件の実行犯で、その後事件の露見を怖れた黒幕に殺されてしまいます。それを知ったときのマークとカドフェルのやり取りが、下記のような会話でした。

「手当をするなんてどんな意味があるのでしょう、もしもその人が何時間もしないうちに、手当もできないほど無惨に殺されてしまうとしたら」
「わたしたちはいま、単なる体のことではなく、魂のことを話しているのだ」
カドフェルは穏やかに言った。
「きみの軟膏と包帯が、魂によい手当てを施すことがなかったなどと誰が言える? 魂を射抜ける矢はない。しかし、それを癒す軟膏はあるかもしれないではないか?」


──修道士カドフェル・シリーズ『聖ペテロ祭の殺人』エリス・ピーターズ著・大出健訳 社会思想社 1991 p250より抜粋

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