ゲーム好きマイペース人生の軌跡:年輪日記

就職して子供も生まれて…と、気がつけば10年以上。マイペースなゲーム好きの日常を綴ったブログです。

『オレンジの壺』

宮本輝の『オレンジの壺』を読み終わりました。

文庫本の解説が非常に的を得ていたため、あえて書くのが馬鹿らしいくらいですが、視点が二重になっているところが本書の特徴です。主人公は佐和子という現代の女性にありながら、物語は彼女の祖父の日記のなか、とくに二つの世界大戦間の時期を中心として展開していきます。

三国の行く末について破滅が当然の帰結であると多くの人に予見されていたかのように書かれている点等、腐っても史学専攻としては本書の登場人物達の描かれ方に違和感を覚える部分がなかったわけではありません。しかし小説としての魅力やコンセプトを損なうほどではなく、物語としては十分に楽しめました。

もっとも印象に残ったのは、佐和子の祖父タヌマユースケが日記の中で自身の優しさと冷たさについて独白している箇所。一見矛盾しているかのような多面性は、人間の、とくに「思考する」人間の特性なのだと思います。